マインドフルネスでは、「ながら作業」をしていることを自動操縦状態にあると定義しており、脳疲労の原因となっているとしている。
食べる、歩く、歯を磨く、電車に乗る……私たちは日々さまざまな行為のほとんどをそれと意識することなくこなしています。それほど注意を払っていなくても、飛行機の自動操縦モードのように、身体は目の前のタスクを処理しているはずです。
ながら作業といえば、中途半端な感じがしますが、同時並行作業やマルチタスキングと呼べば、格好よく仕事ができる人のような印象を受けませんか?
日常生活、仕事をすすめていく上では、過去の習慣や経験、慣れをもとに、ながら作業(マルチタスク)で物事をすすめていく方が2つ以上のことを同時にすすめることができるので、効率が良いと思っていた。
しかし、その効率よいと思っていたマルチタスクは脳疲労の原因となっており、そしてなぜ非効率なのか?といったことが最近の研究で、わかってきているため、研究・論説の紹介と、効率よくするための方法、体験談について書いていきたい思う。
■「ながら作業」ではなぜ、脳疲労がおきるのか?
脳疲労は、「過去と未来へのおもい」から生じています。
ぼくは、主体的な行動をなにもせず、身体と頭を休めたいにもかかわらず、終わったことを思い出して「あーしておけばよかった」「こうしておけばよかった」という思いが起きることがよくありました。
また、将来へのばくぜんとした不安や対人関係でどのように思われるか、仕事やプレゼンをうまくできるだろうか?といったことで脳を支配されることが多かった人間です。
こういった過去や未来のことを考えすぎてしまうのは、脳回路のなかにある、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の暴走が原因といわれています。
DMNは「心がさまよっているときに働く回路」として知られている。そして人間の脳は、なんと1日のおよそ半分以上を心さまようことに費やしているというのだ
『あのとき、ああしておけばよかった』というネガティブな思考の反復、いわゆる反芻思考(rumination)。この種の思考も脳の疲労に直結するわけじゃが、これもまたDMNの使いすぎとの関連性が指摘されておる
意識的な行動、動作を行う場合の脳の消費エネルギーは5%に対して、ながら作業や不安・後悔等で心と頭がさまよっているときにDMNが消費するエネルギーは60~80%といわれています。
<意識的な行動> 5%
<ながら作業> 60~80%
ながら作業をしているときの消費量は、意識的な行動に比べて、12~16倍のエネルギーをつかっているということなんですね。
では脳疲労を減らして、予防しようと思うと、ながら作業や心がさまようことより生じるDMNの暴走をおさえることが大事だということになる。
■マルチタスクのデメリットとは?
マルチタスクのデメリットとして、集中力の低下を述べている。
マルチタスクに慣れきってしまうと、脳からは「大切な機能」が失われていきます。それは集中力です。自動操縦モードにどっぷり浸かっている脳からは、注意を一箇所に固定しておく力がなくなっていくのです。
確かに、仕事等で複数のことが気にかかっていると、1つ1つの効率がわるく、想定していた以上に時間がかかることがあるが、集中力の低下が原因だったのか。
また、マルチタスクは神話であり、生産性を半分近くも低下させ、その上で、脳が縮小していると述べている。
一度に1つのこと -マルチタスキングは神話です。「脳は一度に2つの場所にいるわけではないので、人々がマルチタスキングとして参照しているのは、実際には神経科学者がタスクの切り替えと呼んでいることであり、異なるタスク間を素早く行き来するということです。
タスクの切り替えは生産性を40%低下させるだけでなく、頭脳を縮小するという。「脳を過負荷にしてタスクスイッチに入れようとすると、脳の灰白質が縮小します。
Forget Multitasking. Real Productivity Comes From Singletasking.
そういえば、昔読んだ本のなかで、
「脳は同時に複数のことができない」
「脳は同時に1つのことしか考えることができない」
といったことを書いてあったような気がしている。
だからこそ、マルチタスクやながら作業をしても意外と効率があがらないのは、脳のスイッチングによって、非効率なことをしていただけということか。
■マインドフルネスの目的
脳疲労をふせいで、効率をあげようとするならば、
①心がさまよわないようにする
②脳回路のスイッチングがおきないように、1つのことに集中する
ことが大事だということになる。
その理論でいくと、未来や過去のことにこだわらず、”今、現在おきていること”にフォーカスするマインドフルネスが上記①②を達成するための方法として、理にかなっているとおもわれる。
そうか!ハッハーン! (`Д´) ワカッタゾー!
だから、グーグル社がSIY(Search Inside Yourself)としてマインドフルネスを社員教育に取り入れていたり、フェイスブック、アップル、ゴールドマン・サックス等もマインドフルネスを取り入れていますが、これからの仕事ができる人間の定義は、マルチタスクではなく、シングルタスクで、脳のクロック周波数が高く、1つのことを素早く処理できる人間が仕事のできる人間となっていくのか。
次にSIYとして、具体的にどんなことを研修にとりいれているのか?気になってきたぞ。
■ムーブメント瞑想(動作に意識をむける方法)
マインドフルネスのなかでも、ながら作業、自動操縦、マルチタスクにあたる自動操縦状態から、シングルタスクへ以降するために効果的な方法として、動作に意識を向ける瞑想(ムーブメント瞑想)がある。
グーグルのSIYでは、動作に意識をむける瞑想として、歩行瞑想を行っているらしい。
リラックスと集中とを同時に高めるうえで有効なのがムーブメント瞑想です。こちらは呼吸ではなく、自分の身体の動き(ムーブメント)を意識の錨にする方法です。
グーグルの社員研修プログラムSIY(Search Inside Yourself)でも実践されている典型的なムーブメント瞑想に歩行瞑想があります。
歩行瞑想のやり方は、下記リンク参照。
■体験談
仮面うつ病の治療として通院しているクリニック主催のグループワークの一環で、ムーブメント瞑想を行ってきた。
その内容は歩行瞑想とは別の内容であったため、参考までにやった内容と体験談を記しておく。
ご興味のある方は、試してみてもらいたい。
【行った内容】
①今の感覚の把握
ボディスキャンの簡易版として、椅子に腰かけた状態、身体を動かさない状態で、身体の各部位の感覚を確認する。
②静かに立ち上がる
一気に立ち上がるのではなく、身体の関節の動きを意識しながら、ゆっくりと立ち上がる。
③重心移動をして身体の感覚を確かめる
右足の小指に重心をかける→右足の小指側の側面に重心をかける→もとに戻す→左足の小指に重心をかける→左足の小指側の側面に重心をかける→もとに戻す→右足のかかとに重心をかける→左足のかかとに重心をかける→もとに戻す。
※この時に重心をかけている部位以外に力がはいっている箇所に気がついたら、意識して力をゆるめる。
※ぼくの場合は、力がはいっていることに気がついてもゆるませにくい。そのため筋弛緩の要領で、ゆるめたい部位にあえて力をいれてそれから脱力することでゆるめることを行った。
④両手の指同士を身体の全面で組んでストレッチ
痛気持ちよい程度で、身体の前、後ろ、側面へと伸ばしていき、身体の伸び具合に意識をむけていく。
【体験談】
動作をつける前の感覚では、地面や椅子に接地している親指、かかと、おしり、手をおいている場所等は接地している感触があり、感覚がわかりやすかったが、接地しているはずの小指・薬指、接地していないふくらはぎ等は感覚がわかりづらく、身体のセンサーが鈍っていること。足の指先が少しヒンヤリして冷え性ぎみな状態になっていることを自覚した。
その後、ゆっくりな動作、重心移動とストレッチを数分かけて行った結果、動かす前ではわかりにくかった感覚がすこしずつ感じることができるようになってきた。
身体の感覚が次第にわかりだしてくるのが面白く、ストレッチが痛気持ちよいのもあり、このエクササイズ中は、雑念等がほとんどでずに、身体のうごきに意識を集中させることができた。
グーグルでは歩行瞑想をやっているようだが、ぼくの場合、歩くことに意識を向けようとしてもつい、他のことに気が散ってしまいがちである。
しかし、この痛気持ちよいストレッチでは、意外と集中することができたため、日常生活に取り入れるには、毎日のラジオ体操を日課にして、身体の動きに意識をむけて行うと、セロトニンの分泌をうながすリズム運動と、”いま、ここ”に意識をむけるマインドフルネスが一石二鳥でできてよいのではないだろうかと思っている。
マルチタスクは効率がわるいのに、最後まで一石二鳥を考えてしまう自分の思考に笑ってしまうのだった。